2016.08.12
ハチとシャボテン 第二話
*『せっせと土を掘って』
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叢 「今回掘った粘土の層は、
もともとは何だったの?」
り 「もともとは山で。近所のおっちゃんに
聞いたんだけど、昔はそこに化石を掘りに
行くような場所で。普通にごろごろ
貝とか出てたらしい。」
叢 「海だったんだね。」
り 「そう。そっから植物が育って、
土に還って蓄積したものが...」
叢 「腐葉土になって。」
り 「そう。それが山になって。戦時中は、
そこは瓦焼き場として使われてて、
それから、牧草地になって。
あの辺は良い粘土がとれるんだろうなぁ
と思いながら、前を通ってたんだけど、
勝手に掘る訳にいかんし...」
叢 「まあ実際粘土層を掘るまでって、
何メートルの仕事だから
素人では掘れないよね。崖とか、
えぐれた所から削りとるのが普通だよね。」
り 「そうなんよ。そしたら、その牧草地を
キャベツ畑にするっていう話を耳にして、
あれやあれやという間に何メートルも機械で
掘られて、そこにはもう見事な土が...」
84 「姿をあらわしたんですね!」
り 「重機で削られて現れた粘土の層は、
一目みてわかる、すごく良質の
粘土のグラデーションで。もう、
居ても立っても居られず、
すぐに工事の方に許可をいただいて。
毎日、少しずつ掘り崩しては
土のう袋へ詰めて運んで(笑)」
84 「せっせと(笑)」
り 「そう。せっせと(笑)」
(第三話につづく)