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2022.11.28

#日々の84 その2 佃さんのお椀

一日に一度、いやご飯のお供には必ずと言っていいほど
味噌汁をつけている。だしはやまくにさんのいりこが
お気に入り。お米をといで、水にひたしたタイミング
で、鍋にいりこを数匹割ってはなち、お米を炊きながら
平行して、油揚げやわかめ、仕上げに光浦醸造の麦味噌
をいれるだけのシンプルな味噌汁だ。ねぎはお好みで
加えるのだけれど、あつあつの味噌汁を注ぐならはやはり
漆のお椀に限る。振り返ってみるといろんなお椀をつかっ
てきた。それは実家にあった引き出物のお椀からはじまり、
民芸品店で購入した赤い漆の大ぶりのお椀、一人暮らしの
時は耐熱ガラスのコップに入れて飲んでいたこともあった
っけ。漆がはげたり、家族が増えたり、引っ越しでお椀が
揃わなくなったタイミングに出合ったお椀は佃眞吾さんの
黒い漆のお椀でした。金沢のファクトリーズーマーの棚で
見つけたときの興奮たるや。そのどっしりした佇まいに
惹かれた。けやきの木をくりぬいて、漆を何度も塗り重ね
たお椀はいまだにはげる気配すらない。むしろ艶が増して
手に馴染んできている。清水の舞台から飛び降りる覚悟で
家族分を揃えた記憶は今でもありありと覚えているが、
それを後悔したことは一度もない。今ではお店で佃さんの
展示会を開催してもなかなか出合えない逸品である。
佃さんのお椀との邂逅は、僕が自炊をする理由の一つと
言っても過言ではありません。